昨日から、北杜市のグリーンヒル(新宿区の保養施設)に、四冊の本を携えてやってきた。そのうちの『念ずれば花ひらく』(坂村真民 随筆集)を読み終えた。坂村さんは初めは短歌に打ち込んでいたのだと知った。
<東洋の文芸、わけても日本芸道の特色は、捨である。茶道も華道も、短歌も俳句も、究極は「捨」の一手である。
わたしは二十歳のとき、短歌一途に進もうと思った。爾来二十年、三十一文字の世界の中で生きてきた。捨てて捨てて、三十一文字にする。これが短歌の道なのである。万葉集の時代の人はおのずからこれができた。だから今も生きているのである。>
坂村さんはある時から短歌を捨てて、詩一筋に生きることにしたのだった。どうしてだったのだろうか?
そのあとで恒例ので朝日歌壇、朝日俳壇を今日も読む。
<たましひの話をしたしかたつむり(藤沢市 大内菅子)>⇒高山れおな、小林貴子共選:この大内さんの俳句の凄さはなんだろう。あのノロノロあゆむカタツムリはらたましひの話をしたいのだ。「たましひ」はやはり言霊だろう。
<夏山の人寄せつけぬ緑かな(東京都 松木長勝)>⇒長谷川櫂選:
山梨県の北杜市に二泊してきた。初夏の緑に圧倒された。俳句は自然を切り取りひとのこころを切り取るのだと感心した。誰がカタツムリに言霊をみるだろうか?でもかたつむりはなにものかを語るのである。
次に歌壇に移る。
<もはや狸は化けることなし仔を連れて東京の町の車道を走る(町田市 村田知子)>⇒佐佐木幸綱選:
<核の無き世界を論ずるサミットで核のボタンの真黒き鞄(観音寺市 篠原俊則)>⇒高野公彦選
<昼休みクラスメイトと屋上で若草山を見ながららランンチ(奈良市 山添葵)>⇒高野公彦選:
葵さん、お母さんの作る少し大きくなった中学生用の弁当箱を持って通学をしているんだ。
<間違えて作ってしまったような駅「安中榛名(あんなかはるな)」何もあらぬ(安中市 岡本千恵子)>⇒永田和宏選:
安中榛名駅は長野新幹線の新しい駅なんだが何にもないのかな?別荘地としても廃れたのかもしれない。
<田に遊ぶ山羊に初夏の風吹けば見えぬ匂いを鼻で追うらし(佐世保市 近藤福代)>⇒馬場あき子選:
今週は
<たましひの話をしたしかたつむり(藤沢市 大内菅子)>
が一押しだね。