<万葉の野をなつかしみ寒すみれ(堺市 吉田敦子)>
<コロナ禍とウクライナ危機春寒し(伊賀市 福沢義男)>⇒大串章選:
大串さんのコメントはこうだ。<第一句。「万葉集」の「春の野にすみれ摘みにと来し我ぞ野をなつかしみ一夜寝にける 山部赤人」を思い、寒菫を見つめている。>
福沢さんの句は、世相歌というだろうか。コロナとウクライナで俳句ができるんだ。「春寒し」と春の季語が入っている。俳句は、花鳥風月を詠むものと思っていたが、何でもいいのかな。むしろ川柳に近いのだろうか?川柳ってなんだ。
<身のうちは管一本や鬼は外(島根県 高橋多津子)>
<春秋や吾の中の吾を探す旅(いわき市 佐藤朱夏)>⇒ 高山れおな選:
島根県の高橋さんの俳句には感心した。人間の身体は、口から肛門まで一本の管が通ている。そのことは、医学に興味がある人は知っているが、普通は意識しない。
いわき市の佐藤さんの句に、選者の高山さんが次のようにコメントしている。
<「探す」は必要かどうか。「吾の中の旅する吾や春うれひ」は推敲の一案。」
<雪消えてさみし東京もとのまま(東京都 漆川 夕)>⇒長谷川櫂選:
漆川さんの俳句は、私にはわからない。雪が早く溶けてくれた方が、東京の交通網は助かるんだ。「さみし東京」とはどういうことか?
俳句を詠むのも読むのも難しいね。でも、言葉を編むのは良いね。次に、歌壇を読んでみよう。
<家族にて外食に来つわれのみが卓をズボンを唇を汚す(和泉市 長尾幹也)⇒永田和宏、佐佐木幸綱共選:
⇒長尾さんは、常連の当選者だ。難病を患っている方らしい。ご家族が、頻繁に外食に連れて行ってくれる経験を屡々読んでいる。
<のっそりと月出でくれば雪原は雪洞(ぼんぼり)のごと闇に浮かびぬ(五所川原市 戸沢大二郎)⇒永田和宏選:
⇒雪国に住むとこういう歌が詠めるんでね。
<初めて夫が短歌を詠んだワクチンの三回目副反応の夜(奈良市 山添聖子)>⇒馬場あき子、高野公彦共選:
奈良市の山添さんのご家族は、これでご両親、お子さんたちも歌作りになったのだね。
<弟が父に短歌を教えてた「ならったかん字はぜんぶつかいや」(奈良市 山添 葵)>⇒馬場あき子、高野公彦共選:
弟さんは、やまぞえそうたろうくんくんだったかな?
<夜更けから一心不乱に降る雪を見つめてあきらめる美容院(富山市 松田梨子)>⇒馬場あき子選:
松田梨子さん、「一心不乱に降る雪」なんていう、雪の擬人化とでもいうんだろうか。言葉が巧みだ。
<ひとりまた無縁仏で火葬する民生委員の印を捺すとき(東京都 河野行博)>⇒佐佐木幸綱選:
⇒身寄りのない方を火葬す時に民生委員が判をおすなどと言うところが東京にあるのだと知った。
<医師死せり東で射殺西焼殺 命を救ふ命奪はる(朝霞市 青垣 進)>⇒高野公彦選:
やり切れない事件が相次いだ。そのことを詠んでいる。
<コメント>今週の歌壇も、常連の入選者が多かった。また、世相歌も多かった。