なにし負はばいざ言問はむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと
現代語訳はこうだ。
「その名にふさわしいとすれば、さきいてみよう。都鳥よ、私のあの方は無事でいるのかどうか。」
先日、その前も、小田原城を訪れるたびに、お堀にカモメが泳いでいる。あのカモメが実は「都鳥」らしい。いつも、上にひいた歌を思いうかべていた。
『伊勢物語』は主人公の貴公子が雅(みやび)を求め、元服(大人になる式)から辞世の句を詠んで死去するところまで書かれているんだって。
作者は在原業平だと思っていたら、作者かモデルかはっきりしないらしい。冒頭に引いた歌もそうだが「古今和歌集」に収録されている38首もが「伊勢物語」にんも入っている。それなら、業平が作者じゃないのかな?ところが『伊勢物語』には、業平の没後20年して登場した紀貫之(こちらは古今集の撰者)や100年後に現れる橘忠基(たちばなのただもと)の歌も含まれているんだって。ということは業平がすべてを書いたのではないというのが一般的な見解のようだ。作者不詳で、西暦900年前後に書かれたとの説だ。
続く