TomyDaddyのブログ

毎日の健康管理の記録、新聞、雑誌、書籍等の読書について感想を書いていく。

気になる本『ツベリクリン騒動―明治日本の医と情報』(月澤美代子、名古屋大学出版会、2022年、6930円)のこと

 『ツベリクリン騒動―明治日本の医と情報』(月澤美代子、名古屋大学出版会、2022年、6930円)が、2023年の第12回日本医学ジャーナリスト協会賞の優秀賞に選ばれたことを「Medical Journalist」(協会の情報誌・最新号 Vol.38 No.3)で知った。極めて興味深い大作の本なので読んでみたい。著者の月澤さんは「医学史研究者」という肩書である。こんな肩書ってあるのだろうか?月澤さなんは、順天堂大学医学部の准教授をしていた頃もあるらしい。医師ではなくて看護師の出身のようだ。順大で解剖学の酒井建雄先生の元にもいたのだろうか?順大といえば医史学の酒井シズ先生もおられた。医学博士でもあるらしい。いずれにせよ凄い仕事をしてきた人のようだ。
「Medical Journalist」の記事を勝手に引用しながら記憶と記録としたい。

 <結核菌を発見したコッホは、当時、もっとも注目されていた医学者でした。そのコッホが、1980年、世界各国から5000人以上が集まったベルリンでの国際医学会の特別講演で、「ある物質で処置すると、モルモットは結核に感染しても治るようだ」と報告したのがはじまりでした。いまでは結核感染の「判定薬」として知られるツベリクリンは、「治療薬」として過剰な期待を集め、人体に対する結果を含んだ論文発表の後、欧米各地の医療施設で入院患者に使われることになりました。
 しかし、コッホの主張する治療効果は追認できず、死者まで出て、急速に失望感が広がってきました。
 この「ツべリクリン騒動」を日本で煽ったのは、新聞や知識に乏しい開業医と言われてきましたが、月澤さんは学術論文だけでなく、官報、商業誌、一般新聞、海外の文献、留学生からの私信に至るまで、膨大な資料を読み解き「史実の修復作業」をなし遂げました。
 そして、当時内務省衛星局長であった長与専斎が導入し、時事新報主幹の福沢諭吉が広めたこともつきとめました。>

 ふーん、こういう内容の本なのだ。時代は19世紀末、明治の末だろうか。長与専斎の名前がここでも出てきた。さらに興味がわいたぞ。

 <月澤さんは、特定の治療法に固執する権威ある医師に対して同僚の医師たちが批判をためらう「日本の医療界の風土」が誕生した原点に、この「ツベリクリン騒動」があったとしています。また、内務省の監督下で行われた臨床実験に関する内務文書で「死亡」の数が抹消され、臨床実験中の死者が公的記録として残されなかったことも指摘しています。>

 月澤が指摘したという、「特定の治療法に固執する権威ある医師に対して同僚の医師たちが批判をためらう「日本の医療界の風土」が誕生した原点」が、「ツベリクリン騒動」にあったというのはどういうことだろうか?長与専斎や福沢諭吉は誤っていたというのだろうか?「ツベリクリン」は、治療法ではなくて、結核罹患の「判定」として残ったのだから意義があるのではないのか>

 ともあれ、興味深い本なので借りて読んでみたい。ついでに、 12回日本医学ジャーナリスト協会賞の大賞は以下の二つだ。
 (1)ETV特集「ルポ死亡退院 精神医療・闇の実態」(NHK ディレクター、青山浩平、持丸彰子)
   NHK プラスで見ることができるだろうか?
 (2) 新聞企画「ゆりかご15年 いのちの場所」と一連の報道 (熊本日日新聞社 「ゆりかご15年」 取材班)