本日は早朝から雨が沢山降っていた。寒いので昼前から蟄居して本を読めた。『作家と楽しむ古典』(池澤夏樹・伊藤比呂美・森見登美彦・町田康・小池昌代)を読んでみた。この本は、池澤夏樹編集「日本文学全集 08、河出書房新社」をリクエストしたときに、偶然に検索にひっかかり借りてきたものっだ。目的は、「宇治拾遺物語(町田康訳)を読むためだった。こちらは既に読み始めている。「瘤取り爺さん」はもう読んだ。
『作家と楽しむ古典』のほうは、日本文学全集で日本の古典を現代語訳した訳者が件の翻訳の際の苦労話や翻訳における種明かしを、何処かで講演した講演録のようだ。そもそものこの全集の仕掛け人池澤さんに依る「この本の成り立ちを」を読んでみた。
<各巻ができた後で、みんなの苦労話を聞きたいと思った。いや、こんなにいい訳ができたのだから苦労以上に楽しい仕事だったはずだと、依頼した方は考えたい。少なくとも率先して『古事記』を訳したぼくの場合はいろいろ智恵をしぼるたのしさに押されて無事に最後のページに至ることができた。そこで、訳者のみなさんを招いて「連続古典講義」を開くことにした。ここにあるのはその記録である。>
上に引用した文章を読んでよくわかった。早速に三人の講義録を読んでみた。
(1)「古事記」 日本文学の特徴のすべてがここにある(池澤夏樹)
「古事記」といえば、既に町田康さんが訳した「古事記」を読んだことがある。倭健命(ヤマトタケル)はそれこそ、暴れん坊だけど、父親に疎まれた悲劇のヒーローだったと記憶する。
<日本で最初の文学、それが、『古事記』です。>
上の言葉を押さえておこう。「天皇礼賛の物語?」なんだが、「ゴシップと神話」が豊富に描かれている。「古事記」って面白いんだね。
<『古事記』に登場する神や人間、つまり日本の王族ほど、恋の歌を詠み継いできた人たちはいません。天皇は長らく文化の王でした。>
正月に皇居で「歌会はじめ」があるけれど象徴的だよね。
(2)「日本霊異記・発心集」(伊藤比呂美)
「日本の文学はすべて仏教文学」なんだって。伊藤比呂美さんと言えば、「子宮」を詠った「おまんこ詩人」なんだよね。
(3)「宇治拾遺物語」(町田康)
「みんなで訳そう宇治拾遺」なんだって。町田康さんの言葉扱いは秀逸だね。
夜になって恒例の朝日歌壇と俳壇を読んだ。
<一時間働けばラーメン四杯が食えるアメリカ、日本は一杯(五所川原市 戸沢大二郎)⇒高野公彦撰: 戸沢さんは常連の入選歌人だ。これって世相歌なんだが面白くもなんともない。ラーメン一杯、この辺では900円くらいだ。ということは、アメリカは自給3600円なんだろうか?
<生きたかった兵士の数が「戦果」という酷き言葉に置き換えられる(観音寺市 篠原俊則)>⇒永田和宏撰: 篠原さんも今回は世相歌を詠んでいる。これって、外にでてきた「心」ではないだろう。篠原さんは実は「私歌」のほうが上手い。
<口きかぬ娘と二人夕餉とるなんときれいに魚食ふかな(西宮市 市橋昌己)>⇒川野里子撰: 父子家庭の歌だろうか?思春期の娘は父と話をしない。きれいに魚食う娘はきちんとそだてっれていたんだろう。
<亡き夫のそれと重ねて見てしまうウキィペディアに載る人の享年(下呂市 河尻伸子)>⇒佐々木幸綱撰:
次に、俳壇に移る。
<前向きに老いを楽しむ温(ぬく)め酒(栃木県那須町 小森静江)>⇒大串章:
小森さんが女性であるのが面白い。ぬる燗の日本酒って少しはいいね。
最後に今日の気になる本を書く。
(1)『シベリヤ鉄道三度目の正直』(中野吉宏、17出版、2200円)
この本を読んでみたい。シベリヤ鉄道にも乗ってみたかった。