「ノーベル生理学・医学賞を読み解く」といえば、福岡伸一さんの出番だ。本日(2023年10月12日)朝日新聞夕刊の記事を読んで、多くを引用しながら、まとめておきたい。
<生命現象には、原理的には可能でも技術的には困難な問題が多数、横たわっています。これを解決するのが科学者の腕の見せどころです。カリコさんたちの研究は、たんぱく質の合成という現象を原理から考えたもので、今回はその点が評価されました。>
冒頭の引用だが、科学者の仕事ってやはり面白うそうだね。
<従来のワクチンは、たんぱく質のレベルで作られていました。ウイルスに対するワクチンは、ウイルスそのものを弱毒化したり、ウイルスを鶏卵の中で培養してたんぱく質を精製したりします。>
<カリコさんたちは「たんぱく質はRNAから作られ、RNAはDNAから作られるのだから、原理的に考えれば、DNAやRNAからでもたんぱく質を作れるはずだ」と考えました。この発想は以前からありましたが、なかなか実現しませんでした。>
<ヒトを含む真核生物の複雑な細胞では、細胞の中にある細胞核という部屋の中でしかDNA]は働きません。だからたんぱく質を作らせるには、DNAを部屋の中に運び込む必要がありますが、これがななか難しい。>
<であれば、細胞核に入れなくても働くRNAならどうかと、カリコさんは考えました。
しかし、RNAをただ細胞に放り込むと、防御システムに認識されてたちまち分解されてしまいます。
RNAは、もともと非常に分解されやすい物質です。でも、細胞の中のRNAよりも安定しています。カリコさんは、細胞の中ではRNAが化学的に修飾されていたことを発見し、今回の成果につながりました。>
ハンガリー出身のカリコさんは、新天地を求めて米国にやってきた。東海岸のアイビーリーグの一つであるペンシルベニア大学(野口英世がいたのもここだ)が、カリコさんを最初からアシスタント・プロフェッサーとして受け入れた。(米国の大学の懐の深さだな)
<なお、mRNAワクチンに貢献したのはカリコさんらだけではありません。昨年、亡くなった古市泰宏さんはmRNAの先端に特殊な構造があることを発見しました。細胞内に届けるための「脂質ナノ粒子」とう技術の開発もありました。>
なるほど、今年のノーベル生理学・医学賞は、リケジョのカリコさんだとわかった。
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